粉。趣味:ぶろぐ

ぼくの趣味はぶろぐです

暑いのも寒いのも嫌いだ。

対になってそうなショートストーリーもどきをなんとな~く書いたけど、置くとこないからここに置いときます。粉。(こなまる)です。

 

暑いのは嫌い。

夏の暑さが大嫌いだ。何度日本の四季の巡りを恨んだことだろう。ずっと秋のような涼しさでいればいいのに。
小さい頃から汗かきだった。暑さからくる背中の染みはよくあることで、不快感を覚えても我慢して生きてきた。おまけに大嫌いな虫達は湧くし日焼けはするし電気代はかかるし。

そんな大嫌いな夏の季節でも、大好きな瞬間がある。涼しさを感じる時だ。
扇風機に背を向け下着姿で濃いめのカルピスを飲む瞬間。涼しさが一時の癒しをくれる。
でもやっぱり夏は嫌いだ。外に出たくなくなるのがその証拠だ。

そうして夏を耐え生き抜いた僕に秋がやってきた。外は祭り事の季節と浮かれているけど、かく言う僕も浮かれていた。夏が終わって一段落ついた頃は、気分が上がってしかたがない。一人ふらりと祭りを見ようと、夜8時の公園に向かった。

やっぱり浮かれている。だけどそれもいいなと思えるのは秋だからだろう。夜8時になっても元気な若い学生達に心の中で会釈し、お気に入りの大きな木のしたに向かう。
若い学生、なんて思ったけど、自分とそう離れた年齢でもないことには目をつむった。この前までは若い学生だったのに。

あの大きな木のしたを気に入っているのには訳がある。あの人に会えるから。ただそれだけだ。なぜ会えるのかはわからない。春と秋、この公園が賑わう時だけ現れるから不思議だ。
あの人は、どこか僕に似ている。「波長が合う」という方が適しているかもしれない。
似てはいるのだけど、僕にはない涼し気がある。

正直なところ、大好きだ。すすきを照らす秋の名月のように端麗で、冷えた手を温める仕草も愛おしい。あの人に会えるだろうか。祭りを見るなんて言って、頭はあの人でいっぱいだった。
イチョウの絨毯を踏みしめた先に、その人はいた。嬉しそうな顔をしていたから、僕も嬉しくなった。

話したことはあまり覚えていない。その仕草や表情ひとつひとつを記憶しようと必死だったから。
また会おうと何度か口にしたことは記憶にあるが、次の日もその次の日も現れなかった。
その秋冷は、一時の癒しの瞬間だった。
次会えるのは春の花見の時だろうか。なぜだかそんな予感がしている。

春と秋、大きな木のしたでまた会える日まで。

冬の寒いのも夏の暑いのも耐えて生きようと思える。
暑いのは嫌い。だけど、涼しいのは大好きだ。

 

寒いのは嫌い。

冬の寒さが大嫌いだ。何度日本の四季の巡りを恨んだことだろう。ずっと春のような暖かさでいればいいのに。
幼い頃から冷え性だった。冷えからくる手先の痛みはよくあることで、感覚が無くなっても我慢して生きてきた。おまけに乾燥して肌は荒れるし静電気は痛いし電気代はかかるし。

そんな大嫌いな冬の季節でも、大好きな瞬間がある。暖かさを感じる時だ。
ストーブの前でひざ掛けをしてホットココアを飲む瞬間。暖かさが一時の癒しをくれる。
でもやっぱり冬は嫌いだ。外に出たくなくなるのがその証拠だ。

そうして冬を耐え生き抜いた私に春がやってきた。外は出会いの季節と浮かれているけど、かく言う私も浮かれていた。冬が終わって一段落ついた頃は、気分が上がってしかたがない。一人ふらりと花見をしようと、朝8時の公園に向かった。

やっぱり浮かれている。だけどそれもいいなと思えるのは春だからだろう。朝8時から酒を飲んでいるおじさんに心の中で会釈し、お気に入りの大きな木のしたに向かう。
おじさんなんて思ったけど、自分とそう離れた年齢でもないことには目をつむった。もうすぐそんな歳になってしまう。

あの大きな木のしたを気に入っているのには訳がある。あの子に会えるから。ただそれだけだ。なぜ会えるのかはわからない。春と秋、この公園が賑わう時だけ現れるから不思議だ。
あの子は、どこか私に似ている。「波長が合う」という方が適しているかもしれない。
似てはいるのだけど、私にはない暖かさがある。

正直なところ、大好きだ。雪解けを告げる春の太陽のように爛漫で、流れる汗も輝いていて可愛げがある。あの子に会えるだろうか。花見をするなんて言って、頭はあの子でいっぱいだった。
舞い散る桜の花吹雪が止んだ時、その子は現れた。嬉しそうな顔をしていたから、私も嬉しくなった。

話の内容はあまり覚えていない。その仕草や表情ひとつひとつを記憶しようと必死だったから。
また会おうと何度か口にしたことは記憶にあるが、次の日もその次の日も現れなかった。
その春暖は、一時の癒しの瞬間だった。
次会えるのは秋の祭りの日だろうか。なぜだかそんな予感がしている。

春と秋、大きな木のしたでまた会える日まで。

夏の暑いのも冬の寒いのも耐えて生きようと思える。
寒いのは嫌い。だけど、暖かいのは大好きだ。